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葉酸欠乏症を防ぐ!妊活〜妊娠中積極的に摂取したい「葉酸」と「鉄分」の多い食べ物!

妊娠期は胎児と母親の命を守るために、さまざまな栄養素をバランスよく摂取しなければなりません。なかでも、ビタミンB群に分類される「葉酸」は、胎児の成長や先天性異常の発症リスクを抑えるのに効果的です。本記事では、妊娠期の葉酸欠乏症を防ぐためのポイントを徹底解説。葉酸と鉄分を摂取するメリットや、多く含まれる食べ物をご紹介します。

葉酸とは?

妊娠中は自分の体だけでなく、胎児の発育のために栄養素を摂取していかなければなりません。糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素+食物繊維をバランスよく摂取する必要がありますが、なかでも重要になるのがビタミンB群のひとつである「葉酸」です。

葉酸は水溶性ビタミンのひとつで、ビタミンB群に属するビタミンです。“造血のビタミン”とも呼ばれており、赤血球の生産を助けます。DNAやRNAなどの生合成、細胞の生産や再生を助け、体の発育や健康維持においても大きな役割を担います。妊婦さん以外にとっても必要な栄養素で、葉酸不足に陥ると免疫力が低下し、口内炎やにきび、胃潰瘍などの症状があらわれます。また、葉酸不足は血中のホモシステイン濃度の上昇を招き、動脈硬化や心疾患リスクの上昇にも繋がります。

妊活&妊娠中の方はとくに注意!葉酸欠乏症の症状

細胞の分裂や胎児の成長に大きく関係する葉酸。必要量を摂取しなければ「葉酸欠乏症」というという栄養障害が生じます。葉酸欠乏症の原因は不十分な摂取や吸収不良など。体は少量の葉酸しか蓄えることができないため、葉酸不足が数カ月続いただけで葉酸欠乏症になってしまいます。妊婦さんが葉酸欠乏症になった場合は、胎児の神経管先天異常、なかでも「神経管閉鎖障害」のリスクが高まるので注意しましょう。

神経管閉鎖障害とは

妊娠4〜12週目におこる先天異常で、脳や脊髄をつくるもととなる神経管が生成されない障害です。日本では出生1万人に対して6人程度の発症率で、発症した場合は運動や排泄に障害が起こったり、無脳症などがあらわれます。

妊婦さんの体調不良にもつながる

葉酸不足は胎児だけでなく、妊婦さんにとってもさまざまな体調不良が起こります。貧血による疲労や蒼白、息切れ、めまいが起こり、ひどくなった場合は味覚の低下や認知障害、下痢、精神的な不安症状が訪れます。一般的な成人の摂取目安は240㎍ですが、妊娠中は+240㎍(合計480μg)の摂取が推奨されています。妊婦さんの健やかな日々と胎児の発育を守るために、しっかり葉酸を摂取していきましょう。

葉酸の含有量が多い食べ物(食品)

葉酸欠乏症を防ぎ、妊婦さんと胎児の健康を守るために食べたい食べ物(食品)をチェックしていきましょう。葉酸の含有量もご紹介します。

茹でた枝豆(葉酸含有量:260μg/100gあたり)

良質なたんぱく質、脂質、たんぱく質を多く含む「枝豆」は、妊娠期の栄養補給にぴったり。葉酸の含有量も高く、小腹が空いたときのおやつにもおすすめです。茹でることで葉酸含有量が約60μg減少するため、茹で汁ごと食べられるポタージュにしてもいいでしょう。

ブロッコリー(葉酸含有量:120μg/100gあたり)

抗酸化作用と解毒作用が高く、健康維持や病気の予防にも効果があるといわれる「ブロッコリー」。葉酸のほかにも、ビタミンB1、B2、C、βカロテンも豊富です。くせも少ないのでつわりがつらいときにスープにして食べるのもおすすめ!水溶性ビタミンが多いため、スープなど茹で汁ごと飲む料理出ない場合は、短時間でさっと加熱しましょう。

菜の花(葉酸含有量:340μg/100gあたり)

緑黄色野菜の中でもとくにビタミンと葉酸の含有量が高い「菜の花」。健康効果だけでなく、美白や肌荒れの改善といった美容効果も期待できます。カルシウムも豊富なので、妊娠中から授乳期にかけて弱くなる歯や骨を強くするためにも積極的に摂取していきましょう。

キヌア(葉酸含有量:190μg/100gあたり)

スーパーフードとして知られる「キヌア」も葉酸をたっぷり含む食べ物。栄養価が高いのにグルテンフリー、アレルギーフリーで体重管理が求められる妊婦さんにも適しています。女性ホルモンと似た働きをする植物性ホルモンも含まれているため、ホルモン変化による不調、女性に多い冷え性や貧血の予防・解消効果も期待できます。

キャベツ(葉酸含有量:78μg/100gあたり)

ビタミンや葉酸、ミネラル、食物繊維が豊富な「キャベツ」は、便秘になりやすい妊婦さんにおすすめの食べ物です。胃腸の不調を解消する効果も期待できます。茹でるとビタミンが変性してしまうため、スープや鍋、生のまま食べるのがおすすめです。

 

鉄分を多く含む食べ物

葉酸とともに摂取したい栄養素が「鉄分」です。母体が鉄分欠乏症に陥ると妊婦さんが貧血気味になるだけでなく、胎児の成長不全や早産のリスクが高まると言われています。貧血の重症化を防ぐためにも、妊娠中は1日19.5μgを目安に摂取していきましょう。

納豆(鉄分含有量:3.3mg/100gあたり)

発酵食品の代名詞である「納豆」は、ビタミンKや鉄、たんぱく質を豊富に含む日本古来の高栄養食品。発酵菌が腸内環境を整えてくれるので、便秘に悩まされている妊婦さんにもおすすめです。葉酸も120μg含まれているので、葉酸と鉄分を一度に摂取できます。

小松菜(鉄分含有量:2.8mg/100gあたり)

牛乳より高いカルシウムを含む「小松菜」は、葉酸も鉄もたっぷり。妊娠〜授乳期の骨粗しょう症予防にも役立ちます。実は苦味やあくの少ない野菜なので、ポタージュやスムージーにも適しています。

かつお(鉄分含有量:1.9mg/100gあたり)

良質なたんぱく質、ビタミン、ミネラルが豊富なかつお。鉄の含有量も多く、疲労回復や貧血の解消効果も期待できます。とくに血合いと呼ばれる背身と腹身の間にある赤黒い肉にはビタミンB群や鉄が豊富。血合い部分は汁物や煮付けなどにして食べると、臭みを抑えられます。

 

妊娠中は五大栄養素をバランスよくとろう

妊娠中は自分だけでなく、胎児の命を守るために食生活に気を配りたいもの。葉酸と鉄分だけでなく、五大栄養素をバランスよく摂取していきましょう。とはいえ、つわりや胃の圧迫感などで思うように食事をとれないこともあるでしょう。そんなときは無理に固形物を食べなくてもかまいません。つらいときは、栄養価の高い食材を選び、食べやすいスープやポタージュなどに調理してみましょう。

野菜不足が気になるときは、独自の粉末化プロセスを用いることで、栄養素や食物繊維、色素成分、食味成分を保持した粉末「飲む粉野菜」も活用してみましょう。栄養価が高いと言われるフィトケミカル(ファイトケミカル)を効率的に摂取できます。十月十日(とつきとおか)、ぜひ健やかな妊婦ライフを送ってくださいね。

一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会

岩崎真宏

医学博士、管理栄養士、臨床検査技師。病院で管理栄養士として働き、食事を変えると治療薬の効果が上がることなど実証。その後、医学的根拠のある栄養学を多くのひとが実践できるようにするため、北京五輪メダリストの朝原宣治をはじめ、医師、医療従事者、医学研究者らとともに一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会を設立し代表理事に就任。栄養学からみた野菜の健康価値と野菜不足の社会課題のギャップ、廃棄野菜などの農業課題を解決するため、ヘルスケアと農業の循環型事業に取り組むベジタブルテック株式会社を創業。横浜DeNAベイスターズ 栄養アドバイザーとしてチームサポート。一般社団法人 煎茶道黄檗売茶流 教授 茶名「影仙」拝命。近著『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)。