- 果物・果実的野菜
スーパーや最近ではコンビニでもカットフルーツとして販売されている「梨」。梨の栄養素やカロリー・ビタミン・ミネラル。摂取することでの体への効果効能。またダイエットに向いているかなど食材の基本情報をまとめた栄養大全集です。
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「梨」は栄養コンサルティングガイド®(NCG®)の食品カテゴリーマップにおいて、カテゴリー6にあたる食品です。
「梨(ナシ)」はバラ科ナシ属の果物で、日本で栽培されている梨の多くは中国やベトナムなどが原産といわれています(※1)。白い果肉にさっぱりとした甘みのある果汁で、シャリシャリとした食感が楽しめる果物です。
梨は「日本なし(和梨)」「西洋なし」「中国なし」の3種類に分けることができます。一般的な食用として流通している梨の主な品種には、幸水、豊水、新高、二十世紀、あきづき、新興、南水、二十世紀などがあります(※2)。
日本なしの特徴は「石細胞」というリグニンなどの成分を含むことです。これにより独特の舌ざわりとシャリシャリした食感を楽しむことができます。日本なしの収穫は、7月中旬~11月上旬で、ピークは8月〜9月となっています(※3)。
日本なしは皮の色によって「赤梨」と「青梨」に分けることができます。赤梨は幸水や豊水、南水、新高などで、しっかりとした歯ごたえが楽しめ、甘味のある果汁が特徴です。青梨は二十世紀、新世紀などの品種があります。果肉は石細胞が少ないため赤梨よりもざらつきが少なく、たっぷりの果汁が特徴です(※4)。
西洋なしは特徴的な形をしており、たて長で下部が丸いびん型です。国内で流通している主な品種はラ・フランスやルレクチェ、バートレットなどがあげられます。
西洋なしの中でもラ ・フランスは甘みと酸昧のバランスが良く、なめらかな果肉で食味に優れています。また、独特の上品な香りをもち、スーパーなどで広く流通する西洋なしの主な品種となっています。(※5)
中国で主に栽培されている品種で、日本国内での流通量は少ないです。
鴨梨(ヤーリー)、慈梨(ツーリー)、紅梨(ホンリー)などの品種があります。特に、鴨梨(ヤーリー)は国内でも栽培され、卵形で皮の色は淡黄色に茶褐色の斑点が特徴の品種です。果汁が多く日本梨と同じようなシャリシャリとした舌触りが楽しめます。(※6)
梨は1日1個程度が目安です。農林水産省の食事バランスガイドでは、1日に可食部で200g以上の果物を食べることを推奨しています。梨は1個当たりの可食部が250gのため、1日1個程度を目安に召し上がるのがよいでしょう。(※7)
梨は約90%が水分で「栄養がない」と思われる方も多いのではないでしょうか。しかし、カリウム、銅、亜鉛などのミネラルやビタミンC・ビタミンE・ビタミンB1・ビタミンB6などのビタミン、糖質、食物繊維などが豊富に含まれています。
それでは「梨」に含まれる栄養素や、今注目を集めているフィトケミカル(ファイトケミカルphytochemical)の有無。また、摂取することで期待される効果と効能。100gあたりのカロリー(熱量)など栄養成分表を順に見ていきましょう。
エネルギー 38kcal
水分 88.0g
たんぱく質 0.3g
脂質 0.1g
炭水化物 11.3g
カリウム 140mg
カルシウム 2mg
葉酸 6μg
ビタミンC 3mg
食物繊維:0.9g
糖質:10.4g
一般的な果物のなかでもカロリーは低いといえます。りんごと比較すると100g当たり、りんごは53kcal、梨は38kcalと梨の方が低カロリーです。一般的な「梨」は1個250〜350g程度のため、数値算出の際のご参考になさってください。
梨100g中には糖質が10.4g含まれています。甘みのある果汁たっぷりで歯切れのよい食感を楽しむことができ、間食時のお菓子代わりにもぴったりです。
カリウムは体内の水分調整により血圧を保つ働きや、筋肉の調整に関わる栄養素です。カリウムは水に溶ける性質がありますが、梨は生で食べることができるため効率よくカリウムをとることができます。(※8)
ソルビトールは糖質の仲間で、一般的な砂糖と比べると血糖値の上昇がおだやかです。また、吸水作用があるため、便を軟らかくし便秘解消に役立つことが知られています。
梨100gあたりのソルビトール量(日本食品標準成分表より)
日本梨1.5g
西洋梨2.8g
「梨を食べ過ぎると下痢になる」とよく聞きますが、ソルビトールは大人の場合20〜30gの摂取で下痢が誘発されます。そのため大量に食べなければ下痢の原因となることはないでしょう。(※7)
パントテン酸は水溶性ビタミンのひとつで、体内での脂質や糖質の代謝、エネルギーの産生など多くの酵素反応に関わっています。また、善玉コレステロールを増やす、ホルモンや抗体をつくる働きなどにも関与しています。(※9)
銅は全身で酵素の働きをサポートし、エネルギーの生成や、活性酸素の除去、神経伝達物質の産生、免疫力の向上などに広く関わっています。特に、血液のもととなるヘモグロビンを合成するのに必須のため、貧血予防には欠かせない栄養素です。(※10)
梨には100g当たり0.9gの食物繊維が含まれています。 梨のシャリシャリ感は、水に溶けない不溶性食物繊維の一種である石細胞によるものです。不溶性食物繊維の働きとして、便通を整えることで便秘予防や整腸作用などに効果的といわれています。(※11)
人間が体内で生成することができず、植物を食べることでのみ摂取できる「フィトケミカル(ファイトケミカル)」は植物由来の化学物質。もともとは植物が生きていくため、害虫や強い紫外線などから植物自身の身を守るために生成された成分です。このフィトケミカル(ファイトケミカル)は摂取することで、抗酸化作用や免疫力向上など、人体にもさまざまなメリットがあるとされ、近年注目を集めている成分です。
フィトケミカル(ファイトケミカル)が注目されている理由のひとつは「抗酸化作用」です。抗酸化作用のある食品を摂取することで体の酸化を防ぎ、老化や病気のリスクを低下させることが期待されています。フィトケミカル(ファイトケミカル)は大きく
・ポリフェノール
・含硫化合物
・カロテノイド
・テルペン類
・多糖類
の5種類に分類されます。
フィトケミカル(ファイトケミカル)は、梨の果肉に存在しています。梨に含まれるフィトケミカル(ファイトケミカル)は大きく3つで
フラバノール
アルブチン
クロロゲン酸
が含まれています。
フラバノールは主に西洋なしに含まれています。ポリフェノールの中のフラボノイドの一種で、摂取することで末梢血管に作用し血圧を正常に保つ効果や、加齢による認知機能低下の予防をする可能性が示されています(※12)。
アルブチンは美白効果がありメラニン色素の生成を抑制する働きがあります(※13)。
クロロゲン酸は抗酸化作用をもち血糖値の上昇抑制や血圧改善、抗がん作用など健康を促進する役割が報告されており、心血管疾患、がん、糖尿病、およびそのほかの慢性疾患の予防に効果が期待されています(※14)。
梨100g当たりのカロリーは38kcalと非常に低く、ダイエット向きの食材といえます。
食物繊維やビタミン、ミネラルを含み、便秘解消にも効果的なためダイエット中の方にもおすすめの食材です。
梨の栄養を逃さない!おすすめの調理方法
・生 ★★★
・冷凍 ★★☆
・煮る ★★☆
加熱によりフィトケミカル(ファイトケミカル)が減少してしまうため、そのまま食べるかジュースなど生で食べることがおすすめです。冷凍でシャーベットやアイスにする場合は、ビタミンCなど水溶性ビタミンが流出してしまう可能性があります。長期の保存では霜がついてしまい栄養の損失につながるため、完成後は早めに召し上がることをおすすめします。
ゼリーやコンポート、ジャムなどの加熱調理ではビタミンCが酸化により減少してしまう可能性があるため、加熱時間を短くしましょう。
梨を含む野菜や果物は、賞味期限の記載がないため、いつまでに食べれば良いか迷われる方も多いことでしょう。特に梨は水分が全体の約90%を占めるため、劣化しやすく、適切な保存方法が求められる食材です。
冷蔵庫保存の場合:丸ごとの場合、常温保存も可能ですが冷蔵庫の方が長く保存することができます。新聞紙で包み袋に入れ冷蔵庫の野菜室で保管します。1週間ほどで食べきるのがおすすめです。
冷凍保存の場合:1か月程度であれば冷凍庫にて保存が可能です。皮と種を取り除き、食べやすい大きさに切って冷凍用保存袋に入れ保存します。冷凍すると本来の食感が損なわれるため、ピューレやシャーベットとして使用することをおすすめします。(※15,16)