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栄養士監修「冷凍・カット野菜に栄養はない?」って本当?

美味しさや鮮度アップなどの進化を続ける冷凍野菜と、少量から使えて便利なカット野菜。しかし、冷凍野菜やカット野菜を使う際にどうしても気になるのがそれぞれの「栄養価」ですよね。野菜ごとの栄養価の違いや、自家製冷凍野菜&カット野菜を作る際のポイントなどをご紹介します。

便利な冷凍野菜&カット野菜!栄養価値は落ちるの?

農林水産省の「加工・業務用野菜をめぐる情勢」の報告書によると、コロナ禍による影響で自宅で調理する時間が増え、冷凍・カット野菜の購入額は増加傾向(※1)にあります。

冷凍野菜は下ごしらえ不要ですぐに使えるのが魅力。必要な量だけを袋から出して使えるため、野菜をうまく使いきれずに腐らせてしまう「フードロス」などの心配もありません。

カット野菜は加熱調理用やサラダ用のものなどの種類があり、手軽に野菜を摂取できるのがポイントです。最近では野菜だけではなくキノコ類が一緒に袋に入っているカット野菜もあり、袋一つで炒め物や鍋の具材、味噌汁に入れるなどさまざまな活用ができるのも嬉しいですね。

自宅調理に便利で常備しておきたい冷凍野菜・カット野菜ですが、気になるのはそれぞれの栄養価。「なんとなく栄養が失われていそうだし……」なんて理由で、冷凍野菜やカット野菜を避けている方もいるかもしれません。

では、冷凍野菜やカット野菜で栄養価はどう変化していくのかを見ていきましょう。

(参考サイト)

※1 農林水産省「加工・業務用野菜をめぐる情勢」17ページ目「6.野菜の消費動向(新型コロナ禍の動向)」

冷凍野菜でビタミンCはどう変化する?

冷凍食品は、以下の4つの条件下で作られます。

・商品は常に-18℃以下を保つように管理されている
・消費者に代わって前処理(洗浄・不可食部分の除去・必要な調理など)をしている
・汚れや型崩れがないように包装している
・急速凍結している

冷凍食品の急速冷凍技術とは、食品の組織を壊さないように、凍り始めから終わりまでの時間を約30分以内にすることで、損傷をできるだけおさえる方法のことです。この技術により栄養価の損失や風味も最小限に留まり、かつ-18℃以下で冷凍保存下におうて栄養価を長い間維持できます。

一部を除き、ほとんどの冷凍野菜で急速冷凍の前に約100℃のお湯に短時間だけ浸けたり、熱の蒸気をあてたりする「ブランチング」(※3)を行います。ブランチングの目的は野菜の酵素を不活性化させ変色を防ぐことや、凍結で組織が壊れないようにあらかじめ組織を軟化させることです。

このブランチングによって冷凍野菜のビタミンCは若干減少しますが、生野菜を加熱する際の減少と同程度です。ある実験結果では、-18℃以下で冷凍保存した野菜のビタミンCの残存量が50%になるのには2年以上経過してから、と言われています。

一方、生の野菜は収穫後すぐに低温で保存しても3日後のビタミンC残存量は80%以下になるデータもあり、鮮度の良い旬の野菜を収穫後冷凍するほうが栄養価の点でメリットがあると考えられます。

<参考サイト>

※2 農林水産省「おいしさの秘密を探る!冷凍食品豆知識と製造工場レポート」

※3 一般社団法人 日本冷凍食品協会「冷凍食品Q&A|冷凍食品の基礎知識」

カット野菜には栄養がないの?

次に、カット野菜の栄養について見てみましょう。

カット野菜の種類の中で、カットサラダ(※4)は「原料入荷→原料処理→目視検査→洗浄・脱水→充填・包装→箱詰め→出荷」の工程で作られます。本工程の中で、栄養素の変化が懸念されるのが「洗浄」部分です。家庭でサラダ用野菜を洗うのは1分程度。一方で工場では洗浄に10分間かけます。

しかしながら、家庭洗浄と工場洗浄の栄養成分の差はほとんどありません(※5)。カット野菜と自分で切る野菜では栄養の違いについて心配することはないでしょう。カット野菜は冷凍野菜と違い消費期限が短いため、開封後は期限内に使いきるようにしてください。

<参考サイト>

※4 サラダクラブ「製造工程・品質 パッケージサラダができるまで」

※5 日本調理科学会大会「カットレタスの洗浄方法の違いが栄養成分に及ぼす影響について」

冷凍野菜&カット野菜は自分でも作れる!栄養価を守るポイント

「野菜を丸ごと買ってしまったけれど使いきれないかもしれない」「旬の野菜をしばらく楽しみたい」なんてときは、自分で冷凍野菜やカット野菜を作りましょう。

自家製冷凍・カット野菜のポイントは、以下の3つです。

・購入後すぐにカットし冷凍すること
・できるだけ旬の野菜を選ぶこと
・サラダに使う葉物野菜は冷凍を避けること

生野菜は、保存期間が長くなるにつれ栄養素が減少します。根菜類などは煮込み用にカットして冷凍し、サラダ用の野菜は食べやすく切ってから冷蔵庫に常備しておけば、時短料理が叶うほか、フードロス削減にも貢献できますね。

もっと手軽に野菜をとりたいなら、「飲む粉野菜」もおすすめ

冷凍野菜やカット野菜は時短調理や手軽な野菜摂取に役立ちますが、調理の手間をかけずに野菜を摂りたいなら、「飲む粉野菜」がおすすめです。

「飲む粉野菜」は、野菜を独自技術で空気粉砕し、1つのカプセルに凝縮したもの。使われている野菜は農薬不使用で、野菜の持つ栄養素をまるごと摂取できます。野菜が主成分のため、もちろん副作用の心配もありません。

「飲む粉野菜」には3つの種類があります。

1.9つの野菜
2.ケール・人参葉・ごぼう
3.赤紫蘇・紫人参・紅大根

慢性的に野菜不足を感じる人や、野菜の種類が偏りがちな人に、数種類の野菜をカプセルで摂れる「飲む粉野菜」を試してみてはいかがでしょうか。

冷凍野菜やカット野菜を上手に使い健康的な食生活を

冷凍野菜やカット野菜は、調理の時短だけでなく、料理のレパートリーを増えしてくれるのが魅力。手間をかけずに健康的な食生活を送りたいと考えているなら、食材を無駄にせず食費節約にもつながる冷凍野菜やカット野菜を日々の料理に活用してみましょう。

一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会

岩崎真宏

医学博士、管理栄養士、臨床検査技師。病院で管理栄養士として働き、食事を変えると治療薬の効果が上がることなど実証。その後、医学的根拠のある栄養学を多くのひとが実践できるようにするため、北京五輪メダリストの朝原宣治をはじめ、医師、医療従事者、医学研究者らとともに一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会を設立し代表理事に就任。栄養学からみた野菜の健康価値と野菜不足の社会課題のギャップ、廃棄野菜などの農業課題を解決するため、ヘルスケアと農業の循環型事業に取り組むベジタブルテック株式会社を創業。横浜DeNAベイスターズ 栄養アドバイザーとしてチームサポート。一般社団法人 煎茶道黄檗売茶流 教授 茶名「影仙」拝命。近著『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)。