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「妊婦さんに柿・梨」はおすすめ?柿・梨の栄養素とカロリー

妊婦さんの中には、どの果物を選ぶべきか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。今回は果物の中で「梨」と「柿」に焦点を当て、栄養素やカロリーなどをご紹介します。梨や柿には、妊娠生活を支えてくれる栄養成分が含まれます。糖分が多いため妊婦さんには敬遠されがちな果物ですが、適量を守ることで、他の食事ではとれない栄養を補えます。

妊婦さんは果物を食べるべき?

厚生労働省の「妊産婦のための食事バランスガイド」(※1)では、健康な子どもを産み育てるために、バランスの良い食事を目指すことが提唱されています。

バランスの良い食事とは、「主食・副菜・主菜」の3つを摂ること。とくに、副菜では緑黄色野菜をたっぷり食べて、不足しがちなビタミンやミネラルを摂取するように推進されています。

「主食・副菜・主菜」の3つ以外にも、妊娠期に不足が懸念される栄養素を補うために、牛乳・乳製品や果物が食事バランスガイドに含まれています。

妊婦さんが果物を食べるメリット

妊娠中だけでなく、女性が不足しがちなビタミン・ミネラルが「葉酸」と「鉄」(※2)です。とくに葉酸は、胎児の先天異常(神経管閉鎖障害)予防のために妊娠前から十分な量を摂るよう勧められています。なお、果物中で葉酸が多く含まれているのはいちご・マンゴー・オレンジ(※3)です。

妊婦さんに必要なビタミンやミネラルを取り入れられるほか、食べづわりの緩和にも効果的。空腹になると気持ち悪くなる妊婦さんは、食べやすい果物を準備して口に入れることで、気持ち悪さを和らげられるかもしれません。

妊婦さんが摂れる果物の量はどれくらい?

食事バランスガイドには果物が含まれていますが、妊娠期間中は非妊娠時よりも摂取量を減らす必要があります。

では、妊娠中期から授乳期には、具体的にどれくらいの果物を食べるべきなのでしょうか。目安量(※1)をご紹介します。

みかん:2個
りんご:1個
ぶどう:1房
桃  :2個

妊娠中期や後期は、出産に向けて栄養をしっかりと摂るのがおすすめです。中期は果物を増やし、後期や授乳期は全体的に食べる量を増やすようにしましょう。

妊婦さんに梨と柿はおすすめ?

果物にはさまざまな種類がありますが、みずみずしくて食感も良い「梨」と「柿」は口をさっぱりさせてくれて、気持ちの悪いときにも食べやすい果物です。次は、梨と柿それぞれの栄養成分や効能を見ていきましょう。

梨のカロリーや栄養成分

梨の可食部100gあたりの栄養成分(※4)は、こちらです。

エネルギー ・・・38kcal
たんぱく質 ・・・0.3g
脂質    ・・・0.1g
食物繊維総量 ・・・0.9g
炭水化物 ・・・11.3g
カリウム ・・・140mg
ビタミンC ・・・3mg
アスパラギン酸 ・・・140mg
ソルビトール ・・・1.5g

100g当たりの水分量が88gと、ほぼ水分が占めています。そのためカロリーも低く抑えられています。

梨の成分で注目したいのが、ソルビトール・食物繊維・アスパラギン酸・プロテアーゼです。ソルビトールは梨の甘みとなる成分で、つらい咳や喉の痛みを和らげてくれます(※5)。妊娠中、飲む薬に気を遣う妊婦さんには嬉しい成分ですね。

梨のシャリシャリ食感は、石細胞と呼ばれるもので食物繊維と同じような働きを持っています。梨を食べると腸の運動を促して、便通を良くする効果が期待できます(※6)。妊娠後期に悩みがちな便秘解消に梨の助けを借りてみるのも良いかもしれません。

アスパラギン酸は、クエン酸に働きかけて疲労物質である乳酸の分解を助けます。暑い時期に妊娠期を迎える妊婦さんは、体力消耗を防ぐために梨を食べていきましょう。

また、大きくなった子宮によって胃が圧迫される妊娠期は、胃もたれも起こりやすいもの。たんぱく質を分解する消化酵素のプロテアーゼには、肉を柔らかくする特徴があるため、肉料理を食べた後のデザートとして梨を食べると消化を助けてくれます(※5)。

柿のカロリーや栄養成分

次に、柿の可食部100gあたりの栄養成分カロリーや栄養成分(※7)を見ていきましょう。

エネルギー ・・・63kcal
たんぱく質 ・・・0.4g
脂質    ・・・0.2g
食物繊維総量 ・・・1.6g
炭水化物 ・・・15.9g
カリウム ・・・170mg
ビタミンC ・・・70mg
βカロテン ・・・160μg

柿も梨と同様に、果実全体の8割が水分です。「柿が赤くなれば、医者が青くなる」と言われるほど、柿にはさまざまな栄養が含まれています。

柿の成分で特徴的なのが、ビタミンC・βカロテン・食物繊維です。柿に含まれるビタミンCの量(70mg)は柿の方がみかん(32mg)(※8)よりも上で、厚生労働省が推奨する1日の摂取量100mg(※9)を柿1個でほぼカバーできます。

またβカロテンにも注目です。柿に含まれるβカロテンの量は160μg。βカロテンは体内に入るとビタミンAに変わります。ビタミンAは体の抵抗力を高め強くし、病気から早く回復させる力があります。

βカロテンは抗酸化作用も併せ持っていて、ビタミンCと一緒に摂ることで肌の改善が期待できます。(※10)

妊婦さんは梨&柿はいつ、どう食べればいい?

妊婦さんにもおすすめの梨や柿は、どのように食べたら良いでしょうか。ここでは梨と柿の効果的な食べ方をご紹介します。

梨の効果的な食べ方

食後に食べるとプロテアーゼが消化を助けてくれるため、肉料理や油もの、胃もたれが気になるときにおすすめです。また、果実の大半が水分で体を冷やす効果もあるため、暑い時期のデザートにも適しています。

食欲がわかないときや固形物を食べると気持ち悪くなってしまう場合は、すりおろして食べてもOK!すりおろした梨と肉を漬け込むと柔らかくなり、消化促進にもなります。

柿の効果的な食べ方

柿に多く含まれているビタミンCは加熱によって栄養価が損なわれるため、できるだけ生のまま食べましょう。柿は硬いままでも美味しく、熟した柿も甘みが凝縮しています。熟した柿は冷凍庫で凍らすと、アイスのような食感となります。カロリーも通常のアイスより低いため、妊婦さんでも安心して食べられるでしょう。

梨と柿は妊娠生活を支える栄養分が含まれる果物

梨と柿は、共に日本古来の果物です。どちらも妊婦さんが摂ることで効果が期待できる栄養分が含まれていて、妊娠中に食べる果物にもおすすめです。ぜひ妊娠期間には、自然の甘みとみずみずしさが特徴の梨と柿を食べてみてくださいね。もしつわりなどで食材からの栄養摂取が難しい場合には、9つの緑黄色野菜を空気粉砕してカプセルに閉じ込めた「飲む粉野菜」を取り入れてみてはいかがでしょうか。無農薬野菜を使用していて、妊婦さんも安心して栄養補給ができますよ。

一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会

岩崎真宏

医学博士、管理栄養士、臨床検査技師。病院で管理栄養士として働き、食事を変えると治療薬の効果が上がることなど実証。その後、医学的根拠のある栄養学を多くのひとが実践できるようにするため、北京五輪メダリストの朝原宣治をはじめ、医師、医療従事者、医学研究者らとともに一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会を設立し代表理事に就任。栄養学からみた野菜の健康価値と野菜不足の社会課題のギャップ、廃棄野菜などの農業課題を解決するため、ヘルスケアと農業の循環型事業に取り組むベジタブルテック株式会社を創業。横浜DeNAベイスターズ 栄養アドバイザーとしてチームサポート。一般社団法人 煎茶道黄檗売茶流 教授 茶名「影仙」拝命。近著『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)。